ザ・マナーハウス,アプトン・グレイ The Manor House, Upton Grey
今日の最初の訪問地はハンプシャーのアプトン・グレイという村のザ・マナーハウスだ。
情報収集の中で美しいガーデンが見つかったが、Opening Timesは"Visitors to the Garden are welcome strictly by appointment"となっている。
しかも、5月から7月の平日のみ(Closed Weekends and Bank Holidays)となっている。今年の旅の日程とロケーションから、今日しか機会がない。
例年なら”5月最終月曜日”がバンク・ホリデーなのだが、今年はダイアモンド・ジュビリーのお祝いのため今日に振り替えとなっているのだ。
”ダメで元々”と1ヶ月前ほどに電話を入れてみた。”案じるより団子汁”と言うもの「6月4日、午前に2名ね、どうぞ」との返事だ。
名前を名乗ったら「必要ない」と拍子抜けだ。それだけに、ザ・マナーハウスに向かいながらも一抹の不安は残る。
取り付け道路の入り口には小さな"The Manor House"の看板はあるが、"Garden Open"の文字は見られない。恐る恐る進むと、
右手に荘重なカントリーハウス、左手に小さめな住宅がある。住宅の方に声を掛けると男性が出てた。「アポイントメントを取ってあるが・・・」と言うと、
「聞いているよ。こちらへどうぞ」とカントリーハウスに案内される。背の高いスリムなご主人様らしき方が出てきた。握手をしながら
「良く来た。裏で妻が案内するから裏に回ってくれ」と言う。自ら出てきて挨拶してくれるところが嬉しい。最初の男性はヘッドガーデナーらしい。
裏に案内されると奥様が出てきて小さな博物館のような部屋(写真下右)に通され説明が始まる。
このハウスは15世紀後半のものだが、アーツ・アンド・クラフツ運動(Arts and Crafts Movement)の重鎮だったチャールズ ・ホーム(Charles Holme)が
1902年に購入し、ハウスを修復し、1908年にガートルード ・ジーキルにガーデンのデザインを依頼し出来たものだ。
再び荒廃し、現在の所有者のジョン&ロサムンド・ウォーリンガー(John and Rosamund Wallinger)が1984年に購入したときにはジャングル状態だったという。
購入時にはガートルード ・ジーキルがデザインしたガーデンのことは知らなかったのだという。
ガーデニングの知識は少ない二人だったが、このガーデンの歴史を研究し、
Jekyll's Designを手に入れたことで、回復に着手したのだという。
妻はガートルード ・ジーキルのデザイン画を見てその綿密さに感動したようだ。植物の本質を熟知してこそのデザインといえよう。
先ずハウスに沿ったテラスのボーダーがさすがジーキルと唸らせる(写真上左)。次はハウスの東側に広がるフォーマルガーデンを巡る。
ハウスより1段下がったテラスが"Rose Lawn"だ(写真上中2枚、下4枚)。石垣と生垣に囲まれた長方形の芝生の中に写真下左のような石の造形物が2ヶ所あり、
その周りに幾何学的な植え床が刻まれバラを中心とした植栽がなされている。穏やかな色遣いと植物の背丈・姿形、葉の色・形などの多様さ、バランスが極めて良い。
ジーキルのデザインにしては曲線が少ないように感じる。
写真下右3枚もローズ・ローンの写真だ。河原ナデシコ、ペンステモン、ルピナス、シャクヤク、アイリス、フロックスなど背丈の高い草花が目立つ。
写真下右はハウスのレベルからローズ・ローンのレベルに下りる階段とオークのパーゴラ。パーゴラには蔓バラがクライミングしている。
ローズ・ローンから更に1段下のテラスが"Boling Lawn"で、更に1段下のテラスが"Tennis Lawn"と緑豊かに展開している(写真下左)。
それにつけても、ジャングル状態から30年以上掛けて、ここまで回復したロサムンドとジョンの苦労が偲ばれる。
フォーマルガーデンの北に"Orchard"と"Kitchen Garden"が展開する。フォーマルガーデンとキッチンガーデンの間にボーダーガーデンがある。 ローズ・ローンとは異なるカラースキムがなされている(写真下4枚)。写真下左は花は傘咲きルピナスそっくりなのだが、 余りに巨大さに本当にルピナスなのか自信はない。左から2枚目のポピーといいどうしてここまで大きくなるのだろう。
ハウスの西側にフォーマルガーデンと並ぶ目玉の"Wild Garden"がある。入り口は天使の像が載る門柱としゃれたデザインのロートアイアンのアーチが架かり(写真下左)、 アーチを潜ると半円形に刻まれた芝の段差が斬新なデザインだ(写真下中2枚)。ステージのようでさえある。
しかし、その先は一転、非整形式ガーデンとなる。様々な樹木・潅木の林の下の伸びたグラスを刈り込んだグラスパス(Grass Paths)が程よく蛇行する。
道がカーブし行く先が見えなくなるから、その先に何があるのかと期待感が湧いてくるのだ。
奥に小さな池が掘られ睡蓮や菖蒲など水生植物がコントロールされて植栽されている。植栽の多彩さには目を瞠る。
写真上右のニワトリの色の多彩さも花の色に負けていない。動きも面白く愉快な気分になる。生きたオブジェだ。
Address | Upton Grey RG25 2RD |
Telephone | 01256 862827 |
Web Site | The Manor House, Upton Grey |
オープンの日・時間や入場料は Web Site あるいは
Gardens Finder
Gardens Guideで確認ください。
「旅行記」もご覧ください。